使い勝手のよさと佇まいの美しさが両立

お椀は、和食の基本とされる一汁三菜に欠かせないうつわの一つ。漆塗りや木でつくられているものは、軽くて口当たりがよく、熱々の味噌汁を入れても手が熱くなりません。陶器や磁器など、料理に合わせて食器の組み合わせを楽しめたり、使ううちに色や質感が変わっていくことも魅力です。ただ、木のうつわは熱や水に弱いために食洗機では使えないという弱点が。そこで、木の持つ温かみや自然な風合いはそのままに、使い勝手のよい木製のお椀をつくりました。

食洗機洗浄に強い塗料を施しています。厚塗りになると天然木の表情を損なうため、耐久性と風合いのどちらも妥協せず作りました。

お味噌汁にもスープにも、和洋どちらにも使いやすいやさしい木肌の国産のハンノキを使用しています。
口当たりにもこだわった薄い吸い口にこだわってしあげました。

大きすぎず家族で使いやすいサイズで、気軽に食洗機で洗えるので毎日の食卓で活躍します。

高台も食洗機洗浄を考えた形に

お椀の底にある高台は、安定感を高めて持ちやすくするために欠かせないもの。昔から親しんできた定番の形状を生かしつつ、高台の内側を浅く曲面に削ることで、水がたまりにくく乾きやすいようにしました。食洗機で洗った際に水がたまると、その部分だけ乾燥後も水が残ることがありますが、そういう気になる毎日のことも克服できるようなデザインしました。絶妙な浅さは、持ち心地にもこだわり、木地師と何度も相談してできたもの。内側と外側のバランスを取りながら両側から削り、絶妙なバランスのとれた木椀になっています。

何度も塗り重ねて天然木の表情を生かす

材料には国産のハンノキをろくろ挽きしたものを使っています。安土桃山時代より木地ろくろ挽き技術を持つ木地師が多く暮らす、石川県の山中でつくっています。

木製のお椀は、手にしっくりと馴染むなめらかな肌触り。そんな木の質感を残したたま、水や熱に耐えられるよう、木地の変形を防ぐための硬化塗料を染み込ませて歪みにくくし、防水のためのコーティングを薄く塗り重ねました。

木目が見えているため、工程が少なく思われますが、漆を塗る工程と同じように繰り返し塗っては拭き上げ、研ぐという工程を繰り返しています。

1000回の洗い試験実施

外部機関に出し、食洗機で1000回の洗浄試験を実施。若干口部分の塗装が薄くなりましたが、使える状態を保っています。使い方や洗い方で経年変化も異なりますが、それも含めて木の風合いの変化を楽しみながら、長くお使いいただきたいお椀になりました。

それぞれの個性も味わい深く

天然木のためそれぞれ節や導管（樹木の中の水の通り道）の出方が異なります。切ってみて初めてどのような表情をしているのか見ることができます。全て同じ仕上がりになる加工品とは異なり、それぞれの表情に個性があります。他に一つとして同じものがないのが天然木で作ったものの良さとして、迎えていただいた器をお使いいただけると嬉しいです。ご家族分揃えても、どれにしようかなとお気に入りを見つけていただいたり、それぞれの経年変化をお楽しみください。

年輪の見え方、出方もそれぞれ。使って、洗っていくと色合いや見え方も変化していきます。

内側にも節が濃くでているものもあります。