
抹茶ブームを牽引する「Saten」で、カジュアルに美味しい一服を
西荻窪駅から徒歩5分。穏やかな町の一角にカフェ「Saten」はある。道行く人が気軽に立ち寄れるこの店で、多くの客が注文するのはコーヒー……ではなく、淹れ(点て)立ての「抹茶」や「抹茶ラテ」。そう、ここはスタンドでカジュアルに本格的な抹茶が楽しめる日本茶専門店である。


本当に美味しい抹茶ラテが飲みたくて
今でこそ、抹茶や抹茶ラテが楽しめる店は増えてきたが、「10年くらい前までは気軽に美味しい抹茶が飲める店はありませんでした。とくに抹茶ラテなんて甘いタイプのものしかなくて、どうしてわざわざ甘くするんだろう?と疑問で(笑)」とはオーナーの小山和裕さん。〝茶リスタ(珈琲でいうところのバリスタ)〟であり、抹茶ブームの火付け役ともいえる存在だ。
「Saten Japanese tea」のオーナー、小山和裕さん。飲食店を経営する傍ら、茶葉や茶道具のプロデュースや日本茶にまつわるワークショップやセミナーを行う。

そこで小山さんは「シンプルに美味しい抹茶ラテをつくろう」と一念発起。まずは茶葉の選定からはじめた。茶葉のつくり手である農家と直接取引し、品種や個性、栽培方法などを学びながら抹茶ラテに最適なものを厳選。さらに牛乳には「抹茶の風味を損なわず、それでいて抹茶にも負けない味わいのもの」を選びつつ、数多くの抹茶と牛乳をかけ合わせ、何十通りのテイスティングを繰り返してようやく理想の味に辿り着いた。もちろん無糖だ。

温かな抹茶ラテをいただいた。抹茶ならではの芳しい香りがふわり漂う。一口すするとまろやかな牛乳のやさしい風味の中に、抹茶のふくよかな旨味が広がった。抹茶って、こんなに甘いんだ、そう思わせてくれる一杯。あぁ、美味しい。

甘い、それとも渋い?抹茶は点て方で変わる
「Saten」はオープンキッチンゆえ、抹茶を点てている様子を目の前で見ることができる。忙しいときは1日に100杯もの抹茶を点てるという小山さんは「茶道の経験はほぼゼロ。点て方は完全に自己流です。茶道は流派によって点て方が異なるといいますが、誰もが飲みやすい味わいになるように点てるのが、Saten流かな(笑)」

健康志向も相まって日本のみならず、海外でも自宅で抹茶を楽しむ人が増えつつある昨今。少しだけ美味しい抹茶の点て方をレクチャーしていただいた。抹茶碗を用意して、抹茶3gを入れる。「このとき茶漉しを使って抹茶を漉すとダマになりにくく、泡立ちも違いますよ」と小山さん。

まずは30ccのお湯を入れて茶筅で抹茶を軽く溶く。さらに100ccのお湯を加えたら「最初はバシャバシャと混ぜて大きな泡をつくります。ある程度、泡が立ったら今度はスナップをきかせて細かく丁寧に混ぜていく。大きな泡が潰れて次第にきめ細かな泡になるまで頑張って!最終的に、泡がもこっとした状態になればOKです」

「きめ細かな泡を立てるのは、そのほうが滑らかで口の中に香りがふわっと広がるし、甘味が引き立つから。逆に泡が少ないと苦味や渋味がたって甘味を感じにくくなるんです」

一杯の抹茶が、さまざまな世界の入口になる
「抹茶ってコーヒーや紅茶と同じ飲み物の一つですけど、抹茶ほどカルチャーとして昇華されているものってほかにはないんじゃないかな」
「抹茶はここ数年、健康志向の方々にスーパーフードとして取り上げられ、アレンジしやすいこともあってドリンクやスイーツなど多種多様に楽しまれているけれど、そもそもは茶道をルーツに何百年も続く伝統がある。抹茶をツールにして歴史的背景を語ることもできるし、日本の食文化や精神論、茶葉の個性やその生産者、そして味わいに至るまで本当に多角的な視点で楽しめる。
さまざまな世界の入口になれるのが抹茶の面白いところかな、と思います。だからこそ、僕は美味しいと思ってもらえる抹茶をきちんと提供したい。ここで美味しくない抹茶を飲ませてしまったら、本当にもったいないですからね」

- Satèn japanese tea
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- 東京都杉並区松庵3-25-9
- 電話番号:03-6754-8866
- 営業時間:10時~19時
- 定休日:不定期
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