給湯流茶道Kyutoryu Sado
- 東京都 | TOKYO
- 会社員 | OFFICE WORKER
給湯流茶道 家元。現役の会社員として働くかたわら、オフィスビルで抹茶をたてる茶道団体「給湯流茶道」を2010年に結成。「オフィスで楽しむ茶道」をテーマに、研修や講演を実施中。阪急百貨店、金沢21世紀美術館、道後温泉のストリップ劇場、廃線になるJR駅舎などでも茶会を行っている。
「給湯流茶道」イベント情報
給湯流茶道15周年およびサラリーマン狂言10周年記念、「しごでき女子は、いつも足を引っ張られる狂言&茶会」が10月13日(月・祝)に武蔵小山駅から徒歩6分のビルにて開催されます。
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「阿鼻叫喚!諸行無常の転職茶会」
10月18日(土)、京都で開催します。
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オフィスでランチタイムに抹茶をいただく。
オフィスでランチタイムに茶会を開く。
そんな、少し突飛にも聞こえるようなアイデアを提唱し、普及に努めている団体「給湯流茶道」。家元である谷田半休さんが2010年に立ち上げ、今年で15周年を迎えます。
茶道といえば、畳敷きの和室で、着物に身を包んだ人々がおごそかにお茶をいただく。そういったイメージもある中で、なぜオフィスでお茶を点てるのか。給湯流のお点前、作法とはどんなものなのでしょうか。
都内のオフィスに谷田さんをお招きし、実際に「給湯流茶道」を体験させていただきました。
「ちょうどいいサイズのソファーがあるので、この上でやりましょうか。奥に東京のビルが見えていて、借景としても素敵ですね」
そう言って、茶会の場所を軽やかに決めていく谷田さん。オフィス内のフリースペースにあったソファーを茶室に見立てて、茶会がスタートしていきます。
「IDカードを外して入室してください」
と、さっそく独特の作法が登場。
茶の湯が隆盛を極めた戦国時代、武将たちが戦いの合間に参加していた茶会では、武士といえども刀を外して参加することが決まりだったと言われています。そのことにちなみ、会社員の象徴とも言えるIDカードを外すことを作法としているのだとか。
谷田さん自身、普段は会社員として働く中で、残業が多かったり締切やノルマに追われていたり、オフィスはまさに戦いの場だと感じていたそうです。
「戦国武将たちも、戦に出る前に抹茶を飲んで、少しでも心を落ち着けていたのかなと想像していて。会社員もオフィスで抹茶を飲み、一服することで、千利休や豊臣秀吉の世界観に近づけるのかなと、そんな気持ちでやっています」
茶会で出すお菓子としてこの日用意されていたのは、香川県の瓦せんべい。
「お菓子は、出張先で買ってきたものを推奨しています。例えばこのおせんべいは、腹が立つ組織に見立てていただいて、叩き割って好きなかけらを召し上がっていただくという趣向です」
お菓子を食べ終わると、いよいよ抹茶で一服。
参加者のお茶を亭主がすべて点てると、お昼休みの時間が足りなくなってしまうということで、給湯流では、自分で自分に一服を点てる「自服(じふく)」スタイルを採用。
それぞれが持ち寄ったお気に入りの茶碗に、亭主が電気ケトルからお湯を注ぎ、あとは各自でお茶を点てていきます。泡立ちなどはあまり気にせずに、お茶の粉が溶ければ美味しく飲めるとのこと。
「最低限、茶筅だけは用意してもらって、抹茶はできれば良いものを。あとは、茶碗はマグカップでもいいと思っています。戦いの場である午後の会議に向けて、自分でお茶を点ててリフレッシュする。そんな世界観ですね」
今回はソファーの上でしたが、給湯室などでやる場合はヨガマットなどを敷いておこなうことも多いのだそう。
千利休の茶室に衝撃を受け、給湯流茶道の着想を得る
15年前に給湯流を始めた谷田さんですが、それ以前は茶道と深くかかわることもなく、むしろ自分とは縁遠いものだと考えていました。
「女性が着物でやる習い事でしょ?くらいのイメージしかなかったんです。それがある時、友人から『へうげもの』という千利休や古田織部が登場する漫画を紹介してもらって。読んでみると、戦国武将たちが戦のさなかに死に物狂いで茶道具を集めたり、仲間のために茶会を開いたりしていて、これは面白いかもしれないと」
それをきっかけとして、次第に茶道への興味が深まっていきます。
そして関西出張の折に、千利休が建てたとされ、国宝にも指定されている茶室「待庵(たいあん)」(京都府 山崎)を見学に行き、わずか二畳の狭小空間を見て衝撃を受けました。
「実際に中には入れずに、小窓から室内を覗けるだけなのですが、思わず笑ってしまうほど狭くて。その時に『これはオフィスの給湯室と同じくらいでは?』とピンときたんです。だったら、給湯室を『待庵』に見立てて茶会をやるのもアリかもしれないと考えました」
その後、別の流派のお稽古に通いながらお茶の基本を学びつつ、そこで得た知識や作法を給湯室やオフィス内に当てはめるとどんなことができるだろうと、給湯流のアイデアを練り始めます。
「最初はただ『給湯室でお茶を点てる』ことしか考えていなかったんですが、その流派としての“作法”があった方が面白いというアドバイスをいただいて、IDカードを外したり、冷蔵庫を床の間に見立てたりといったことを付け加えていきました」
気軽に、楽しく。オフィスで抹茶の習慣を
あるモノやコトをほかの何かになぞらえる「見立て」。カジュアルに抹茶を楽しむというだけではなく、給湯流では「見立て」の面白さを大切にしています。
「たとえば今日のソファーも、ちょうど同じような広さなので『待庵』に見立てられる。なんでもこじつけていくと楽しいんです。プラスチック製のお茶碗にも元ネタがあって。お茶の世界で重用されている『井戸茶碗』が、もともと朝鮮半島で量産されていた日常のうつわだということにちなんで、敢えてプラスチックのものを使っています」
そんな話をすると、参加者の方から『へー』と驚きの声が出たり、そこから茶道の歴史に興味を持ってもらったりすることもあり、こだわって説明するようにしているのだそうです。
「初心者の方でももちろん楽しんでいただけますし、過去にお茶を習っていたような方は私たちのパロディーの元ネタが分かることで、より一層面白いと感じていただけるかもしれません」
現在、約5人ほどのメンバーで活動している「給湯流茶道」。今後も、さまざまな企業、空間で、面白い茶会を開いていきたいと話します。
「抹茶にはカフェインが入っているので、飲めば午後の仕事の前にシャキっとできます。また、心を落ち着けるテアニンも入っていて、上司と喧嘩した怒りも落ち着けることができる。何より、抹茶って美味しいんだ!ということに気づいてもらいたいですね。オフィスでコーヒーをドリップする人はいるのに、抹茶を点てる人がいないのはもったいないというか。会社の昼休みに、一瞬だけ集まって気軽に茶会を開く。抹茶を点てる。ぜひやってみてもらいたいと思います」
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