手に持つ仕草をきれいにしてくれる、大事な仕事の道具です。sufutoの名刺入れ

日本各地から五十を越える作り手たちが集う中川政七商店主催の合同展示会「大日本市」。 その運営を担うメンバーは、日々、全国の作り手と交流し、年間何百という品物に出会う、いわば「いいもの」の目利き集団。 この連載では、そんな彼らが「これは」と惚れ込んだ逸品をご紹介。実際に使ってみての偏愛を語ります。

語り手:松山 千恵

中川政七商店主催の展示会「大日本市」の実行委員。 8年間の直営店長を経て、全国の観光地で提携する土産店「仲間見世」 のアドバイザーを務める。 たくさんのモノに触れ合うなかで、それぞれの良さを発見し、自分らしい物と量を整えていく暮らしが好きです。

ブランド:sufuto  
推しの逸品:名刺入れ

およそ四千年の歴史を誇る、西陣織最古の織物「綴織」。 最高峰の美術織物としておめでたい席や晴れ舞台を華やかに彩ってきました。 私達はこれまでの大切にされてきた日本の文化や、職人の技術を受け継ぎ、 「大切な時」に寄り添う品々を紡いでゆきます。

名刺入れって、気心がしれた間柄では登場しません。一番最初の印象を決めるものだから、できれば「こういう者です」というイメージを託したい。でもなかなか、自分らしいものを探すのは大変です。

ちょうど今年に入って対面で商談する機会が減った時に、長年使っていた名刺入れを買い換えてみようと思いました。頭に浮かんだのが、展示会のサポート担当をさせてもらっている、清原織物さんの「sufuto」の名刺入れです。

sufutoでしか出会えない、最高峰の美術織物「綴織」の名刺入れ


ブランド名のsufutoは漢字で書くと「寿布と」。着物の帯や結納に使う掛けふくさ、祭礼用の幕地など、古くから「最高級の縁起の良い布」とされてきた「綴織 (つづれおり)」を活かしたプロダクトブランドです。この綴織は4000年もの歴史がある織物ですが、現在滋賀県で織れるのは、唯一清原織物さんだけです。

素材は絹で、触れると着物の帯のような滑らかな手触りです。名刺入れは全部で8色ありますが、どれも日本の伝統色に基づいたもので、落ち着いた中に華やかさのある色合いを好きになりました。


私は鉄紺色を選びました

納まりのいいサイズ感や閉じた時の音も好きです

持ってみると、一般的な名刺入れよりコンパクトなサイズ感です。秘密は横マチ部分のつくりにあって、和裁の伝統的な技法「千鳥がけ」で綴じられています。



マチ部分に生地を使わない分、横幅がすっきりして手に納まりがよく、糸が伸縮するので名刺の出し入れもしやすいです。一般的な名刺の厚さでマチの深いほうに15~20枚、浅い方にも5枚は入るかと思います。



実は、名刺入れを閉じた時の音も気に入っているポイントです。「パン!」と大きな音が立つこともなく、静かに「パタン」。名刺を上に置いた時の佇まいにも、美しさを感じます。


 

触れると自然と背筋が伸びます

この名刺入れは、例えば革の名刺入れを長年使って「そろそろ卒業かな」という時に、大人が第二弾で選ぶ名刺入れなんじゃないかなと思います。

落ち着きがあって持つ人を選ばないけれど、きっと会話のきっかけになるような、さりげない個性がある。持つと不思議と、身のこなしにも意識が向きます。



清原さんが守り抜いてきた伝統織物の歴史が、他にない美しさとして、大切にしたいと思わせる「品」として、ものに宿るのかもしれません。




触れると自然と背筋が伸びて仕事に向かう気持ちが上がり、手にもつ仕草もきれいになるような、大事にしたい仕事の道具です。


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