中川政七商店が残したいものづくり #03麻

中川政七商店が残したいものづくり
#03 麻「中川政七商店の麻」


商品二課 河田 めぐみ

日本における麻織物の歴史は最も古く、長年にわたって人びとの衣生活を支えてきた麻。
かつて奈良は麻織物の一大産地でした。独自の晒技法で全国に広く知られていたのは純白の美しい麻織物「奈良晒」。
1716年、中川政七商店はそんな奈良晒を商いとして創業したのが始まりです。
 
創業から303年、世の中の主流は綿素材や化学繊維に変わりましたが、現在でも中川政七商店では当社のルーツである様々な麻の織り物や編み物を使用した衣服を作っています。
現在では様々な工程において機械化され大量に作ることができるようになりましたが、それと同時に、昔と変わらず手の仕事、手の感覚、みたいなものが、素材を作るうえで欠かせないものだということを感じます。

扱っているものは昔も今も変わらず天然の繊維。
毎年品質や特性も微妙に変化したり温度や湿度によっても仕上がりが大きく変わることがあります。
昨日は織れていたけど今日は織れない、みたいなことが多くあることを知りました。
まさに生命と向き合う仕事だと感じます。
そうして出来上がった生地には、機械で作ったものであっても、人の手のぬくもり、自然の豊かさを感じます。
そんな麻の特性を生かし、春夏秋冬、暮らしに寄り添い、心地よさとともにある麻の服作りを目指しています。

 
10月からの新作では、はじめて防寒機能のある中綿入りのコートを作りました。
普段着ている麻の服に自然と馴染むような冬のアウターを作りたい、という想いで企画しました。
表地に使用している素材は麻とウールを混ぜたもの。
染めから乾燥まで、ゆっくり時間をかけて仕上げているため自然素材ならではの皺感が独特な雰囲気を作り出しているのが特徴です。
生地に圧力をかけていないため麻であってもふっくらした暖かさがあります。
ぜひ冬に着る麻の風合いに触れていただきたいです。
 
 
シリーズ名:中川政七商店の麻
工芸:麻
産地:静岡県浜松市(麻ウールのあったか綿入れコート)
商品企画:商品二課 河田 めぐみ

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本連載は、中川政七商店 渋谷店の企画展「中川政七商店が残したいものづくり」に連動し全7回にわたって配信いたしました。
原稿はすべて、作り手たちが自分の言葉で記したものです。

渋谷店の企画展では、「ものづくりの途中」をテーマに、構想段階のデザイナースケッチから試作品、産地での製造風景真など、商品が生まれるプロセスを一挙に展示しています。
全国そこかしこの工場で、工房で、小さな部品にさえ施される丁寧な仕事と作り手の静かな誇り。 わたしたちが日々向き合うものづくりの過程で感じたこと、知ったこと、こう考えて、こんな方たちとつくったんですということ。
わたしたちのものづくりをお伝えいたします。
会期は12月3日(火)まで。ぜひ遊びにいらしてください。
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