デザイナーが話したくなる「萬古焼の耐熱土瓶」


10年以上商品のデザインをしている岩井さんが「こんなに試作品を作ったことはない。」と、感慨深そうにずらっと並んだ試作品を愛おしそうに見ていました。

お茶を家で誰でも美味しく飲むためには、と考えたお茶の道具。
その工程で出来たのがこのたくさんの急須と土瓶と湯呑のサンプルなんです。(実は写りきれてないものがまだまだありました。。)

煎茶と玉露用の急須、焙じ茶用の土瓶。
今回は土瓶のお話を聞きました。

→煎茶・玉露用の有田焼の絞り出し急須のお話はこちらから



美味しい焙じ茶を家で飲みたい。
私の中では、煎茶よりもざっくりと入れて飲めるお茶という印象。

美味しく淹れる秘訣は、この土瓶の名前でもある「耐熱」。そう、直火にかけられるんです。焙じ茶の適温は100℃なので、沸騰したてで保温力もある土瓶なら美味しく淹れれるということなんですね。土瓶で沸かしたお湯は、遠赤外線の効果でまろやかになります。陶器は保温力も高く、冷めてきても温めなおしも簡単です。



直火を可能にしたのは、萬古焼の技術でした。昔から、耐熱に強い焼き物として私たちの生活で広く使われてきました。
そこで直火で漢方薬などを煎じる薬土瓶を昔から作っている、明治20年創業の三重県の竹政製陶さんにお願いすることに。今回、オリジナルの土瓶として、耐熱陶器だけど艶のある釉薬にしたい、内側に目盛りを付けたいという相談をしました。しかしこの要望には、職人さんも難しい顔に。。



実は耐熱陶器は一般的には、マットな仕上がりのものが多いんです。
艶のある釉薬は相性が悪く、うまくのらなかったり、割れてしまったりするそうで、好んで使われることはありません。しかし、岩井さんが時間をかけて熱意を伝え続けた結果、職人さんが試作品を作って下さったそうです。最初の試作品は製品としてたくさん作ることは難しい状態だったのですが、そこから何度も何度も釉薬を調整していただき、希望の色と艶感に仕上がったのです。



内側の目盛りも成形方法上、外側に装飾は可能だけれど、内側に何かを施すということはかなり難しいということなんです。
しかし、今回の美味しくお茶を淹れることを解決するための、簡単にお湯を適量計るための目盛りはなくてはなりません。これまた、大試行錯誤です。
釉薬で目盛りを描いても、焼くと流れて消えてしまう。凹みをつけても、釉薬で埋まってしまう。いろいろな方法を考えながら、釉薬を撥水させて線を表現することに成功したんです。
もちろん、その作業もひとつひとつ内側に手を入れて正確にラインを付けるという手仕事です。

釉薬の調整、目盛りの調整、たくさんの試作品を目の前に職人さんの努力に頭が下がる思いと、新しいことへの諦めない挑戦の気持ちに尊敬の思いでいっぱいになりました。


見た目に大きく見えるかもしれませんが想像よりも軽く、直火にかけても持ち手は素手で持てました。お湯がまろやかになるなら、白湯をいただくのにもいいですよね。岩井さんも毎日これでお茶を沸かしているのだとか。
こだわりの落ち着いた釉薬の仕上がりと、やかんのように大きすぎないサイズが使いやすく暮らしに馴染みますね。
 




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