戦後間もない、一切のものがなくなった時代。桐生は、かつて着物の刺繍で技術を磨いた横振刺繍の腕で新たな道を見出し、一世を風靡するほどのブームを支えました。
後に「スカジャン」として進駐軍の人気を博すスーベニアジャケット。これは、日本的なモチーフを刺繍した、今までにない組み合わせのまったく新しい製品でした。
地域の産業を支えた横振刺繍は、時代の流れのなかで希少な伝統技術として残っています。
当時に想いを馳せながら、今では希少になった横振刺繍で、あらためてこの美しい日本を表現した、くらしの工藝布をお届けします。
ミシン針が左右に動く横振刺繍は、身体感覚が求められるものづくり。機械を使うと言っても、熟練した職人になるまでは10年以上の年月がかかると言われています。意識を集中させて針を動かし、刺す瞬間は、どれも一度きりで後戻りができません。
具体的には、型枠に張った生地を腕で振りながら、図案に沿って針を運び刺繍していきます。線状に縫われる糸1本1本の連なり、重なりによって、柄や質感を表現。そうして一針一針に、身体がなす営みの痕跡が残ります。





戦後の桐生で、進駐軍向けのスーベニアジャケット、いわゆる「スカジャン」の刺繍を手がけて、一世を風靡した横振刺繍。
そんな横振刺繍の歴史に想いを馳せ、あらためて美しい日本を表現しました。

今回ものづくりを共にした村田刺繍所では、横振刺繍から派生したニードルパンチの加工技術をもっています。ニードルパンチは何百本の針がついた大型の機械で作られることが多いのですが、村田刺繍所では、それらとはまるで姿かたちの違う、いわゆるミシンを使ってニードルパンチをします。それは横振刺繍機があったからこそ可能になった 加工技術でした。ニードルパンチのミシンは、針の構造が横振刺繍機と異なりますが、身体の動きは一見よく似ています。職人はある道具に独自の工夫を加え、そこで新たな加工方法を生み出してきました。時代の変化とともに、今ある資源を生かしつつ柔軟に、かつ貪欲に向き合う気質そのものが、この地域には脈々と続いています。
11月5日(水)より、オンラインショップのほか、下記店舗で販売いたします。店舗によって品揃えは異なります。
