地産地匠アワード2025
地産地匠

地産地匠アワード2025

計69件のエントリーの中から一次審査を通過した11点を対象とし、
2025年6月10日、11日に最終審査を実施。
グランプリ1点、準グランプリ1点、優秀賞2点、審査員奨励賞2点が決定し、
9月3日の授賞発表式にて発表しました。
優秀賞以上の4商品は、10月下旬より販路支援を開始予定です。

商品・応募者カテゴリー

メーカー

グラフメーカー

デザイナー(複数回答可)

グラフメーカー

グランプリ

グランプリ「大門箸」1
グランプリ「大門箸」2
地域名
奈良県吉野郡
商品名
大門箸
メーカー
株式会社廣箸 中磯 まき子
デザイナー
A4/エーヨン 菅野 大門
株式会社廣箸 中磯 まき子 A4/エーヨン 菅野 大門

コンセプト

箸は料理を美味しく食べるための道具であり、目立たない「名脇役」のような存在でいい。そこで、箸先を極限まで細くすることで、料理の繊細な味わいを引き立てることを考えた。試作を重ねる中で、片側をあえて太めに残す非対称型にすることで、持ちやすさと美しい所作を生み出せると気づく。さらに、通常の利久箸に使われる杉ではなく、木目が素直で強度のある吉野檜を採用。刃物仕上げの箸先は口当たりが滑らかで、より繊細な食体験を提供する。こうして二年の実用試作を経て、大門箸の形が完成した。

受賞コメント

この度は、栄えあるグランプリを賜り、誠にありがとうございます。 現在、割箸の99%が外国産と言われ、国産割箸産業は静かに衰退しています。そんな中、この賞を通じて、この産業に光を当てていただけたことを、大変嬉しく思います。 割箸も口に入れるものです。食べものと同じように、産地や生産者に思いを馳せて選ぶことは、心豊かなことではないでしょうか。 今後は、料亭やレストランなどへの業務用展開はもちろん、大門箸、そして国産割箸産業全体を通じて、日本の食文化の発展に貢献していきたいと考えています。 ぜひ、購入や飲食店での採用で応援していただけたら嬉しいです。

審査講評

お箸を本来の姿に立ち返らせたい、という提案です。木のお箸は、使ううちに先が欠けたり痛んだりして、ある時点で「更新」されるのが本来のあり方でした。ところが、傷みにくい材料を選び、傷んでしまっても「まだ使えるから」と渋々使い続けるのは、金属製カトラリーの価値観にとらわれているのかもしれません。お箸は一生物でも使い捨てでもなく、適切なタイミングで取り替えるのが理想なのだと、大門箸は改めて教えてくれます。この大門箸は、両端が尖った利休箸をアップデートしたデザイン。しっかり整えられた形状と表情で、使い勝手もとても良いヒノキの箸です。素材は吉野ヒノキの「皮目」と呼ばれる部分。建築用材を製材した際に出る外側の木片で、有効活用されることが少ない部位です。数か月間しっかり使い、きちんとお別れできる。そんな「ちょうど良い」寿命をもつお箸。それは吉野ヒノキの生態系サイクルを支え、日本が大切にしてきた“適切な更新性”という美徳を体現する道具でもあります。こうした循環を前提にした道具こそ、本当のラグジュアリーと言えるのではないでしょうか。
大治 将典

デザイナーの熱量・デザイン力と、これまで培われてきた産業の独自技術のかけ合わせで、日常的に使っている割り箸の概念がひっくり返っている点に感動しました。産業構造の課題も解決するだけでなく、生活者の食卓の常識も変えてしまうかもしれない…!というワクワクした気持ちになれた作品でした。
長田 麻衣

お箸のデザイン、それも形状を変えるプロダクトデザインの余地は残されていないように思っていた。「その手があったのか」手にして使ってみれば、誰でも気づくだろう。仕組みのデザイン、環境のデザイン、デザインはどんどん広義的になるが、やはりモノのかたちを適正に整えるデザインこそ、根源なのではないか?環境や、資源の循環は前提として、やはりモノのデザインに回帰していく、そんなことを感じる製品だった。
坂本 大祐

日本人として日常目にし、手にしている箸と産地と真摯に向き合わないと生まれなかったカタチ。想像もできないほどの試作を繰り返し行きついた先はとてもさりげなくて、スマート。新しい普遍性を感じました。
矢野 直子

準グランプリ

準グランプリ「KOHABAG -久留米絣-」2
準グランプリ「KOHABAG -久留米絣-」1
地域名
福岡県八女市
商品名
KOHABAG -久留米絣-
メーカー
下川織物 下川 強臓
デザイナー
HanaMaterialDesignLaboratory株式会社 光井 花
下川織物 下川 強臓 HanaMaterialDesignLaboratory株式会社 光井 花

コンセプト

福岡県南部・筑後地方で織られる久留米絣。その製織工程で生まれる柄のズレを錯視効果として捉え、オリジナル柄「Optical illusion Ikat」を考案し、バッグに仕立てました。約38cm幅の小幅生地を無駄なく活用し、どの柄や色でも魅力が映えるよう、シンプルで機能的なデザインに仕上げています。A4サイズが入る大きめと小さめの2サイズ展開です。

受賞コメント

この度「地産地匠アワード」にて準グランプリをいただき、大変光栄に思っております。
約3年間のコラボレーションの中で、多くの新しい久留米絣の柄を制作し、その活用の一つとして久留米絣の小幅を活かしたバッグのデザインを考案いたしました。バッグを通して、これまで久留米絣に触れる機会のなかった方々にもその魅力を知っていただければ嬉しく思います。
今回の受賞を励みに、今後もコラボレーションを発展・継続させながら、久留米絣の魅力をより多くの方に届けていくことが出来ればと考えております。

審査講評

久留米絣の反物幅をそのまま活かして仕立てたバッグです。柄の特色である“ズレ”を錯視効果として取り込み、印刷の版ズレやモアレ、振動しているかのように見える斬新なパターンへと昇華させたデザインに強く惹きつけられました。工芸に関心の薄い層にも響く、十分な“フック”が備わっていると感じます。バッグとしての細部も丹念に詰められており完成度は高いものの、素材特性による制約も含め、さらなる改良やバリエーション展開の余地が残されているように思われます。また、デザイナーが工場に入り込み、実験と検証を重ねて布を開発し、最終的にプロダクトへ落とし込む。その制作プロセスと、それを受け入れている作り手との関係性は理想的だなと思います。こうした関係性を築ける「地産地匠」の取り組みが、全国に広がってほしいと切に願っています。
大治 将典

デザイナーと職人のタッグのバランスが素晴らしく、まさに「地産地匠」を体現されているチームであることに感銘を受けました。「幅が決まっている」という特産品の特性を変えずに活かし、また属人的にならず、持続可能な製作を実現しており、工芸の存続と未来が見据えられているという視点にも魅力を感じました。
長田 麻衣

つくり手とデザイナーの筋の良さを強く感じた。着物の幅がそのままバックの幅になるという展開の明快さと、自分たちを超えて、久留米絣の産地全体をも見据えたあり方に、感銘をうけた。またテキスタイルのユニークさにもこのタッグの良さが現れていた。伝統柄の素晴らしさは言うまでもないが、次代の伝統柄になりえるものづくりに取り組む気概を感じる、そんなテキスタイルだ。
坂本 大祐

作り手とデザイナーのタッグの組み方が素晴らしいプロダクト。地域にどっぷり浸かって、作り手さんと意見交換しながらアウトプットに至っただけでなく、産地に根付かせていきたいとプロセスをシステムにする姿勢に感銘を受けました。
矢野 直子

優秀賞

優秀賞「三河軍手」1
優秀賞「三河軍手」2
地域名
愛知県三河
商品名
三河軍手
メーカー
石川メリヤス有限会社 大宮 裕美
デザイナー
Rosey Aphrodina 久保田 千絵
石川メリヤス有限会社 大宮 裕美 Rosey Aphrodina 久保田 千絵

コンセプト

STORYとDESIGNで軍手を再定義し、使い捨てでは無く、使うことで愛着がわき、使い続けたいと思える軍手。
原料は「特紡糸」という繊維リサイクルの原点と言える糸。市場に出せない「B格」と格付けされたワタを糸に紡ぎ、軍手などの原料にして発展した。愛知県三河地方が元祖である。この糸のポテンシャルは糸のムラにあり、大量均一生産の糸では出せない、独特な温かみのある風合いを生み出す。
デザインのポイントは、生地にポリウレタンをフィット感と保温性を高めたことと、7色のカラーネップ糸(色とりどりの繊維つぶが入った糸)を使うことで選ぶ楽しさとアナログ感を向上させたこと。産地が誇れる「三河軍手」。

受賞コメント

自動車関連産業が圧倒的に盛んな愛知県三河地方。かつては繊維産業で栄えた歴史があります。
繊維を再利用する仕組みも明治時代から続いており、国内最大の繊維リサイクル産地として発展してきました。
ところが1990年以降関連企業の廃業が加速しています。産地の衰退は進行していき、消滅の危機もあります。
最大の要因は、価値が見出されていないことです。
地場産業の価値を上げる商品づくりをすることで、地域の繊維産業を持続可能なものにしたいと願っています。

審査講評

長年にわたり軍手づくりを続けてきた産地が手がけた、アップデート版の軍手です。従来の軍手は左右兼用ゆえにフィット感が不足しがちですが、本品はポリコットンの適度な伸縮性によって手にぴたりとフィットし、快適な装着感を実現しています。手首をしっかり覆うよう袖丈を長くし、ミックス糸で多彩なカラーを展開するなど、シンプルながら新鮮な工夫が随所に光り、ガーデニングから自転車通勤まで幅広いシーンでの活躍が期待できると感じました。軍手を「使い捨ての消耗品」にも、「用途を限定した手袋」にもせず、あくまで軍手としてのアイデンティティを保ちながら可能性を広げている点が秀逸です。
大治 将典

かわいらしいデザインと素材の心地よい質感が素敵な作品ですが、単にファッション性に流れるのではなく、軍手が本来持つ実用性に正面から向き合って実現した作品である点が素敵でした。デザインの変化で製品の可能性が格段に広がることを実感しました。製品の既存の魅力と、新しい要素の接続の仕方が心地よい作品でした。
長田 麻衣

軍手というモノは、身の回りに必ずあるが、そのモノの先を考える人はあまりいなかったのではないか?もちろん高価なものになれば、良いものはたくさんあるけれど、身近な軍手というポジションそのままに、素材やデザインの見直しで、アップデートされた軍手。ありそうでなかったこのプロダクトには、つかい手目線で考えられた優しさがある。
坂本 大祐

軍手がこんなにチャーミングに!素材の使い方もさることながら、様々なシーンで活躍できる魅力あるプロダクトです。使い捨てではなく「愛着を持って長く使いたい」と思わせる、従来の軍手のポジションを覆してくれました。
矢野 直子

優秀賞「スパイラルインナー」1
優秀賞「スパイラルインナー」2
地域名
大阪府泉州(泉大津市)
商品名
Spiral MiGU(Make it Gentle to Universal) スパイラルインナー
メーカー
株式会社アイソトープ 浅田 好一
デザイナー
特定非営利活動法人ユニバーサルファッション協会
川村岳彦、錦織悦子、佃由紀子
地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
加藤貴司
川村岳彦、錦織悦子、佃由紀子 加藤貴司 加藤貴司

コンセプト

コンセプトは、包帯のように斜めに肌に沿いフィットするウェアです。
ニットを斜行させる事で縦横だけでなくバイアス方向の伸縮性も実現しました。
シャリ感が特徴の綿100%の強撚糸に縮絨(ソーピング)を強くかけ、肌触りの良いプレミアムな風合いに仕上げました。
ホールガーメント(無縫製)で作成している為、縫い目が無く、着るときも脱ぐときも着ているときも、ストレスフリーな着心地です。
ユニバーサルデザインを採用し、肩を上げづらい方も楽に着脱いただけます。
襟ぐりから履くように着脱する事も可能です。

受賞コメント

優秀賞に選出いただき、ありがとうございます。スパイラルMiGUの開発に携わった全ての方に感謝致します。
私達はこの商品を通して3つのことを実現したいと思っています。
・ユニバーサルファッションを体感していただくこと
・泉州産地のニット生産技術を用いて高付加価値な製品作りを行うこと
・持続可能な適正価格での製品づくりに産地も主体的に携わること
スパイラルMiGUの課題としてはアイテム数が少なく、現在は上衣のインナーのみです。今後は他のアイテムやカラー展開を行い、より多くの人にユニバーサルファッションを届けたいと思っています。

審査講評

ニット製造時に起こり得る「斜行」とは、生地が斜めにねじれて編み上がる現象で、本来は不良と見なされるものです。本品はその斜行を逆手に取り、優れた伸縮性を活かしてワンサイズで幅広い体型にフィットするインナーニットへと昇華させました。襟ぐりは大きく伸びるため、被って着用するだけでなく、履くようにも着用でき、寝たきりの方に着せる際にも負担を軽減します。縫い目のないホールガーメント製法により、一般的なニットよりも軽量で、端部も縫製がないため汗が素早く蒸散しやすい形状。シャリ感のある糸による爽やかな肌触りに加え、綿100%という天然素材のため、ナイロンアレルギーの方にも安心して使っていただけます。製造地は工芸産地ではなく、いわゆる産業集積地です。こうした地域も転換期を迎える中で、地産地匠の視点を取り入れたものづくりが新たな生態系を育み、持続していくことを期待しています。
大治 将典

技術と繊維のプロフェッショナルが生み出した革命的な作品で、感動と驚きが沢山ありました。産業の構造的課題を解決したいという視座の高さと、体型などにとらわれず、あらゆる人が心地よく着用できる作品である点が魅力的でした。介護の現場等でも活躍することがイメージでき、今後の展開が楽しみです。
長田 麻衣

はじめて目にした時、このものの凄さが分からずにいた。手に取り、実際に着てみてはじめてその凄さに驚いた。発明といってもいいくらいのデザインがこのモノにはある。プロジェクトに携わった人たちは複数いらっしゃり、素材や、技術のプロを含むチーム体制と、長期に渡る開発期間を経て生み出されたという。産業的な工芸があり得るのではないか?そう思わせられた。
坂本 大祐

技術者が知恵を出し合い仕上がった名品になる可能性を秘めています。「ユニバーサル・デザイン」とよく耳にしますが、万人がハッピーになれることってなかなかない。これからの展開がとても楽しみな逸品です。
矢野 直子

審査員奨励賞

審査員奨励賞「シルッキアップサイクルブランケット」1
地域名
群馬県桐生市
商品名
シルッキアップサイクルブランケット
メーカー
デザイナー
審査員奨励賞「ATSUZOKO」1
地域名
栃木県日光市
商品名
ATSUZOKO
メーカー
日光下駄 山本 政史・中山 美穂
デザイナー

審査総評

審査員 大治 将典
書類審査の段階では、不安を覚える応募も少なくありませんでした。慎重に審査を重ねて最終候補を約10点に絞り込み、実物を前にするといずれも秀逸で、落選とするのは本当に難しかった。これが率直な感想です。 さらに、「地産」である作り手と「地匠」であるデザイナーご本人から直接お話を伺う中で、その人柄のすばらしさと、日本各地にこれほど多彩な才能が息づいている事実に深く感銘を受けました。そこにこそ「美しさ」の本質があるのだと、改めて感じています。 地産地匠アワードは、このような逸材をすくい上げ、新たな視点を社会に提示する役割を担っています。伝統工芸やクラフト、産業といった既存の枠組みに埋もれさせるのではなく、「地産地匠」というレイヤーに引き上げることで、日本の風景はこれまでとは異なる表情を見せ得るのではないでしょうか。その可能性を、これからも広げていきたいと強く願っています。

大治 将典

審査員 長田 麻衣
今回、初めて審査に参加いたしましたが、日々目まぐるしく移り変わる若者の消費とは違う世界観があり、沢山の刺激をいただきました。また、日々ものづくりに向き合われている皆さんの真摯な姿勢と熱い思いに触れることができ、胸を打たれる瞬間が何度もありました。今回の受賞作品は、伝統工芸を未来につないでいくために重要な視点や向き合う姿勢があり、他のものづくりでも参考にできることがあるように感じます。工芸品をより多くの人に手に取ってもらえる機会を作り、今後も長く続いていくために、工芸に対する理解を深めるだけでなく、使い手への理解にも目を向けることが重要であると改めて感じました。

長田 麻衣

審査員 坂本 大祐
昨年に続き、本年のアワードでも、素材や原料の巡り、担い手のこと、市場のことなどモノを取り巻く「生態系」のようなものにまで射程をもつモノがありました。産地の窮状を訴えんがために、多くをつくらないという選択をしたプロダクトもあります。そんななかで受賞されたみなさまのモノからは、より多様な「生態系」を感じました。産地に対しては百姓のようなアプローチで、環境の循環を意識した手入れをし、モノに対しては、最小限の意匠で、最大限の美を引き出す、そんな振る舞いを感じます。それは「控えめな創造力」と言えるようなデザインの有り様でした。こういったものづくりが広まることで、小さくとも豊かな暮らしがこの国で営み続けられるのではないか?そんな希望を感じたアワードでした。ありがとうございました。

坂本 大祐

審査員 矢野 直子
様々な賞や、工芸を盛り立てるという活動が多くある中で、今回のプロジェクトでは、自分自身とても素直な気持ちで作品と向き合うことができました。それは皆さんがそれぞれの産地、ジャンルの中で真摯にモノと対峙し、知恵を絞り、出来上がったプロダクトを愛をもって伝えてくれたからだと思います。 審査に参加させていただきとても幸せでした。いえ、私が皆さんからものを生み出す喜びと感動をいただいたのだと思います。ありがとうございました。この続きを、そして新しい発見をこの「地産地匠」に期待しております。

矢野 直子

販路支援

販路支援 中川政七商店店舗とオンラインショップ

2025年10月23日より、中川政七商店店舗とオンラインショップを中心に販売開始予定です。

ほか、最大60店舗で取り扱い予定

※取り扱い店舗は変更になる可能性があります。最新の販売状況はお問い合わせフォームよりご確認ください。

<オンラインショップ企画展>