審査員
日本各地の地域産業に伴走し、プロダクトからブランドまで一貫してデザインする。地域の素材・状況・記憶の力を活かし、現代へ創り継ぐ「継創(けいそう)」を掲げ、製品・体験・流通・コミュニケーションを統合的に設計。ててて協働組合共同創業者・現相談役。
<メッセージ>
工芸産地にデザイナーとして関わり始めた20年ほど前から、各地で担い手の廃業が相次ぎ、技術・素材・道具が失われかねないという話を幾度となく耳にしてきました。近年は、もはや「産地」と呼べない状況にまで追い込まれているところも少なくありません。今後、産地の再編は不可避だと考えています。では、新たな産地像とは何か。伴走していくデザイナーはどうあるべきか。既存の産地構造を超え、この「地産地匠アワード」が新たな産地像を見出す契機となることを願っています。
地域産業においては、ともすればマイナスに見える要素でさえ、発想を転じればプラスへと読み替えられます。地域のものづくりを「受け継ぎ」、この時代ならではの新鮮さを添えて「創造」された「地産地匠」に出会えることを楽しみにしています。
長田 麻衣
マーケティングストラテジスト
消費者インサイトを起点に、企業のブランド構築や新規事業開発、マーケティング組織の立ち上げ支援を行う。これまでに化粧品・食品・玩具・ファッションなど多様な業界において、商品開発・ターゲット戦略・PR設計などのプロジェクトに携わる。特にZ世代をはじめとした若年層の価値観・行動様式の変化に精通し、定性・定量調査を通じたリアルな声の収集と、そこから導く戦略設計を得意とする。企業のマーケティング部門の立ち上げや、社内のマーケティング人材育成にも従事。
<メッセージ>
昨年に引き続き、審査員を拝命いたしました。昨年の審査では、皆さんのものづくりに向き合う真摯な姿勢と熱い思いに触れ、胸を打たれる瞬間が何度もありました。各地域で受け継がれた技術と思いを今後も受け継いでいくには、今と未来の使い手の視点にも目を向けることがとても大切です。日々生活者の動向を観測している立場から、ものづくりの未来を皆さんと共に考えていきたいです。
奈良県東吉野村に2006年移住。2015年
国、県、村との事業、シェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を企画・デザインを行い、運営も受託。開業後、同施設で出会った仲間と山村のデザインファーム「合同会社オフィスキャンプ」を設立。2018年、ローカルエリアのコワーキング運営者と共に「一般社団法人ローカルコワークアソシエーション」を設立、全国のコワーキング施設の開業をサポートしている。著書に、新山直広との共著「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」(学芸出版)がある。奈良県生駒市で手がけた「まほうのだがしやチロル堂」がグッドデザイン賞2022の大賞を受賞。2023年デザインと地域のこれからを学ぶ場「LIVE
DESIGN School」を仲間たちと開校。
<メッセージ>
僕自身、地域に身を置くデザイナーの1人として、このアワードにとても大きな期待を寄せている。地域の時代だと言われて久しいが、当の現場はまだまだ厳しい状態が続いている。それが不幸だと思ってはいないが、もったいないことだなとは思う。同じような想いでいる、地域に根ざす、関わるデザイナーはたくさんいるのではないか?残念なことに1人の力は驚くほど小さい。けれどその1人が歩みを止めてしまうと、ゼロになってしまう地域は、日本中にたくさんある。このアワードは、そんな小さな歩みにこそ、光を当てるアワードだと思う。「地産地匠」というタイトルには二度も「地」が出てくる、それは紛れもなく、みなさまのいる地域を指している。このアワードは地域にこそ開かれたアワードなのだ。
矢野 直子
積水ハウス株式会社 業務役員
R&D本部 デザイン設計部長
多摩美術大学卒業後、良品計画、三越伊勢丹研究所、多摩美術大学講師などを経て2023年より現職。
同社の愛着を育む住宅提案life knit designを統括。
<メッセージ>
「地産地匠アワード」の審査員を今年度もご指名いただきありがとうございます。
ものを生み出す仕事をする上で、最も大切にしてきたのは「先人の知恵と敬意」です。その地域の風土、産物、ヒト、知恵と手から生まれた無垢なものづくりに幾度もハッとし感動してきました。時には「かなわない」と思ったり、時には「自分だったら?」とわくわく想像してみたり。こんな風に様々な思いを募らせながらものを作り続けるのは私たちの使命です。
昨年のアワードでは、そんな思いを胸にした作り手が共創をうみ、私たちの生活をどのように潤し、継承されるか、真剣に向き合っている姿勢に学び、心打たれました。
今回はどんな出会いがあるのでしょう、とても楽しみにしております。