地産地匠アワード2026

地産地匠アワード2026
審査レポート

2025年の初開催に続き、3回目の開催となった「地産地匠アワード2026」。全国各地から計62件のエントリーが集まり、一次審査では審査員それぞれが書類で審査を実施。計14点が最終審査に進みました。
最終審査では、2日間にわたり対面での審査を実施。1チームずつ、実物サンプルの提案とプレゼンテーションを行いました。その後、審査員それぞれの評価を持ち寄って議論した上で、グランプリ1点、準グランプリ1点、優秀賞3点、奨励賞2点が決定。
このレポートでは、最終審査の場で何が議論され、どのように受賞作が決定したか、その過程をお伝えします。

審査風景

グランプリとして選ぶべきものとは? ―イノベーティブかどうか、そして賞を取る意味とは

【大治将典さん(以下:大治)】では、議論をはじめましょうか。現時点で、◎(グランプリ候補)が3人以上、つまり過半数入った商品はありませんでした。

僕としてはグランプリとして選ぶものは、中川政七商店のみなさんが、ちゃんと後で売るぞ!となるものを選びたいなと思いました。売り場でちゃんと売って、売り上げを取れるものにしたいんですよね。じゃないと、次のその地域の工芸の夢がなくなってしまわないかと。まだまだ枯れた技術でも新しいイノベーションが生まれるし、しかもちゃんと今売れるんだ、ということを示したい。あと、地産地匠がこれからコンペだけではなくて、お店だったり活動体になっていった時に、そういうことをちゃんと感じるものをグランプリにしたいなと思っています。

あとは、地産と地匠、作ってる人とデザインした人たちがどう絡まってるがちゃんと言えるものがいい。そう思った時に、結構評価が変わったんですよね。最初はizaizaに一票入れたいなと思ったんですけど、最終的にはウール毛布、七味入れ、雨傘に入れました。

雨傘とウール毛布はちょっと背景が似ていて、個人で始めて、自分が問屋になっちゃって、メーカーをいっぱい口説き落として、ここまでようやく到達したというところがすごい。でもそうやって、個人だったからイノベーティブなことができたんだと思うんです。普通のビニール傘屋さんだったら、そんなに面倒くさいことはしない。

審査風景

【坂本大祐さん(以下:坂本)】僕も雨傘は位相がずれてるというか、和紙を元々使ってた用途とは違う用途に変えていくことで新たな価値を見出そうとしてるところが、他にないなと。雨傘とizaizaはそういう意味においてすごいと思います。着眼点の良さと、その上で製品として成立している。

ウール毛布は、毛布のいいものなんです。七味入れも棗からの転換だと思うと同じカテゴリーに入ってくるかもしれないし、友禅アートブラウスも着物からブラウスへの転換を図っているけど、実際そういうプロダクトは既にありそうだと思いました。

そう思うと、izaizaと雨傘に関しては、ちょっと今までに無いものが出てきたぞっていう驚きがありましたね。

【大治】izaizaは最後までグランプリ候補に残ってたんですけど、商品にまだ改良の余地を感じたんです。実際に売るんだったら大きいサイズで高くした方が売れそうだし、耐久性のあたりはまだ詰めきれてない。だけど、めちゃくちゃイノベーティブだと思います。い草が長くなくても、短く刈られたものでも作れるし。使う量も、そんなにたくさん使わなくても、畳と同じ敷物が作れるのがすごい。

【坂本】去年の大門箸じゃないですけど、賞を取る意味を考えると、「そんなことできるの?」ということだったり、「それで変わるかも?」みたいな兆しが感じられる良さはあるんじゃないでしょうか。izaizaや雨傘の未完成感は仰る通りだけど、もっといろんな人がそれを応援するっていう世界線もあるんじゃないかと思ったし、すごいことやってるなとは思っています。

審査風景

【大治】長田さんと矢野さんは、雨傘が△になったのはなぜですか?

【長田麻衣さん(以下:長田)】私はデザインがもうちょっと、サイズ感がもう少し小さい方がいいなとか。こっちが気を遣う感じがするというか。何かを欲しい!って思った時って、基本自分主体で考える。この雨傘はすごいかわいいし素敵だけど、こっちが我慢することがちょっと多い。ちょっと大きいなとか、重さとか。

【矢野直子さん(以下:矢野)】完成度、そうですね。ラミネートがすごく綺麗に仕上がっているのですが、その淵のパイピングの処理が惜しかったりとか。もう一工夫、洗練できるのではないでしょうか?

【大治】この値段を超えたら買わないかな、と勝手におもんばかって素材を変えたり、作り勝手を変えてしまっているんですかね。今後は地産地匠は、それを飛び越えたものでいいんだよっていうメッセージを出したいなと思いました。使い手と作り手が一緒に飛び越える、みたいな作り方にした方がいい。雨傘は今1万8000円だけど、ディティールが改良されて3万円だって言われたら、そっちの方が欲しいじゃないですか。

【長田】忖度してしまうと、逆に価値が下がっちゃいそうですね。

【矢野】私が△を入れたものは全部そうなんです。

【大治】とすると、完成度という点で言ったら、友禅アートブラウスや包丁、七味入れはクリアしてますよね。友禅ブラウスは、着物をコンバージョンした洋服として完成度はすごく高いし、美しいし、多分絶対に売れると思うけど、それはイノベーティブなのか?って言った時にはちょっと弱い感じがしますね。

【坂本】僕は雨傘かizaizaのどっちかだと思いました。雨傘は量の世界を頑張れるなかで、そこに和紙がちゃんと使われる意味はあると思ってて。他方でizaizaは、今まで畳やゴザが抜けられなかったハードルを飛び越えてきたなとは思うんですよね。

【矢野】雨傘は、使う側がちょっと緊張してしまいそうですね。るんるんってさせないというか。

izaizaは、基本的にウールという柔らかいものを使うガンタフトという製法をつかって、こんなに硬い草を柔らかくして打とうと思ったこと自体がすごい。めちゃくちゃイノベーティブだと思うんだけど、まだ発展途上な気がしました。だけど、みんなで、この可能性にかけてみたいってはなしました。なので、大きいのを作ってもらいたいですね。このサイケな色合いと組み合わせで、もう一周り二周り大きいものが出来上がったら、すごく絵になると思います。

審査風景

【坂本】技術的なところは一旦できるとこまでは来てるから、あとはもう普通にやるだけの話じゃないでしょうか。

【大治】大きいのは買ってくれないかもって思って小さくしてるんだったら、それをおもねない、突き抜けてもらうのが良いんじゃないでしょうか。そのことは多分、全部の商品に言えると思うんですよ。

【長田】サイズだけな気がしますね。イノベーション感とデザインもめっちゃいいし。サイズが大きくなれば全然ほしい。ふつうに可愛いと思います。

審査風景

【矢野】大きいものを作ってもらう、というのが4人の中でオッケーだったら、izaizaがグランプリが良いと思います。

【大治】じゃあこれグランプリにしますよ。では、izaizaがグランプリです!

(一堂拍手)

グランプリ「izaiza」

グランプリ「izaiza」

【矢野】あとの準グランプリ、優秀賞は、新しい普遍性を感じるものにしたいですね。地道で確実なものを選びたい。

準グランプリは、選ぶなら毛布かな。そもそも毛布の産地で、元々この機械を使いながらずっとアクリル毛布を作っていたのに、天然素材の風合いにとにかく特化していて、かつなんだか仕上がりがとても垢抜けている。クオリティを細かく細かくこだわっていった。パイピングがないとか、芯材を白じゃなくて黒にするとか。そういうこだわりを、老舗の毛布メーカーと、一人の毛布を愛してやまない個人が作り上げたというのが素晴らしいですね。

グランプリ「izaiza」

【坂本】ウール毛布を織りじゃなくて編みで実現したというのがすごいと思います。すごく軽いし。バージョン5だと言われていて、細かな改良をつづけているんだなと。ここまでやり切ってるのが本当にすごい。

【大治】こだわりのものって日本は言いがちで、でもそれって作り手のエゴだったりしますよね。これはでも、使いたいからのこだわりじゃないですか。使い手におもねていない。他のギリギリ引っかかってる商品は、ちょっとおもねてるんですよね。そこが、乗り越えなきゃいけない大きな差だと思います。作り手が勝手にマーケットってこうでしょと思い込んで、今までコストカットしたりしていたことが、使う側になったらこの方がよかったってことが、多分いっぱいあると思うんですよ。

【坂本】地匠はやっぱり、使い手でもいなくちゃいけないですね。そこが分かれ目になる気がします。プロダクトとしてだけ考えてるんじゃなくて、本当の意味で自分たちも使いたいのか、使っているのか。そこが明暗を分けてる気もしました。クオリティを引かないっていうのは、自分がまさに使いたいからやる、ということはあると思います。

【長田】メーカーさんもめっちゃ良かったですね。昭和から続く毛布メーカーさんのアップデート。

【矢野】量産品を作っていることが多い産地だと思うんですけど、そこからふつうのラグジュアリーを、老舗のメーカーが作り上げたというのは評価に値すると思いました。

【大治】今回、量産メーカーっぽい人たちが来てて、なんかすんません、自分みたいなもんが、と仰ってて。傘屋さんもそうだけど、そんなことない。もっと誇ってほしい。去年のスパイラルインナーと同じで、もう自分たちは誇って大丈夫だよって言いたいですね。

【長田】量産の機械で高品質なものを作ることは、ずっとある機械を元に新しいものを作るということ。だとすると、他の産地でも真似しうるんじゃないでしょうか。その仕組みの再現性も含めて評価したいと思いました。

【坂本】作り手さんの応援にも繋がるなって気がしますね。これが賞を取って光を当てることが、産地にもたらす価値が大きいと感じました。

【矢野】ものの質感やクオリティは他の商品も負けていないんだけど、支援をする、応援する、評価するという意味でも、毛布が準グランプリが良いんじゃないかと思います。

準グランプリ「SERENE メリノウール ニューマイヤー毛布」

準グランプリ「SERENE メリノウール ニューマイヤー毛布」

【大治】優秀賞については、七味入れと友禅ブラウスは異論ないです。

七味入れは、一次審査の時は多分△もつけていなかったかと思うんですけど、実物を見て話を聞くと、とてもいい活動だし、プロダクトしてもめちゃくちゃよくできてるんですよ。棗の技術を残すためにやってるとか、小径木だからのサイズ感もちょうど良かったりとか、料理家さんと組んでるとことか。ちゃんとrが取れていて、振ったときに七味が溜まらないようにしていたりとか。木目が合う場所でちゃんと七味が出るようになるとか。売り場で見せられると、めちゃくちゃ説得力があって価格も全然いいって思えるなと。僕だったら欲しいって本当に思えました。

【矢野】家で缶の七味入れを見てみたんですけど、それよりも本体と蓋の重なりが長く作られているんですよね。おそらく摩擦を増やして抜けないようにとか、木の伸縮を逃がすようにとか、そのあたりもよく考えて作られている。

【大治】ただ、これまでの活動も含めて20年続けられている。もしこれがグランプリになって、そういう取り組みが続きすぎると、どんどん産地がこぢんまりとしそうだなと思ったんです。小さい方に向かっていって、イノベーティブじゃなくなっちゃうんじゃないかと。そう思うと、優秀賞が良いんじゃないかと思いました。

優秀賞「kodachi -Shichimi Spice Holder-」

優秀賞「kodachi -Shichimi Spice Holder-」

【矢野】友禅ブラウスがすごいなと思ったのは、それぞれの絵をちゃんと友禅で描いた上で、デジタルにするときに「ブーケにした」という言葉。いわゆる着物のリメイクとは違って、そのままじゃない。そもそも平面で見せる工芸だったものを、立体として、柄がどう見えるかを考えて配置をしている。デジタルを使って、友禅をどういう風に、次の衣装にしていくかに昇華させているように感じました。

【坂本】評価のポイントとしては矢野さんも言う通り、デジタルと手描きの塩梅の良さでしょうか。どちらか一方が立ちすぎる嫌いがあって、手描きにどんどんと行きすぎちゃうか、もっとデジタルデジタルしちゃうか。その辺りが良いところでバランス取ったなというのがこの商品の良さですよね。

【矢野】ワンサイズで、私も長田さんも気持ちよく着れたし。

【大治】デザイナーの力量がすごくあるなと僕も思いました。パターンが見える人なんだろうなと思って。

【長田】ワンピースも欲しいですね。

【大治】僕は素材好きなので、本当の天然素材のものもやっぱり欲しい。ポリの可能性はあるけど、ガチのシルクでも作ってほしいな。

【坂本】いずれそういうバージョンもあっても良さそうですよね、このブランド。東京友禅だからこそ、こういう風にデジタルとポリで軽やかに作れたのかもしれないですね。

優秀賞「友禅アートブラウス」

優秀賞「友禅アートブラウス」

【坂本】包丁に関しては、プロセスの中で、メーカー側の問屋さんのヒアリングをものすごく丁寧にしたんだなと感じました。彼の話の中から菜切包丁が出てきてるじゃないですか。包丁問屋さんが、家で使ってるのはこれだった、というところから着想している。技術というよりは、その引き出し方といったら良いのか。この形になってる理由がそれなんだ、っていうのがすごく好感を持てました。

【大治】包丁は菜切を見つけたのもいいし、グリップもすごい持ちやすいんだけど、デザインとクラフト感とのバランスで、今まで作り手が持っていた工芸感、クラフト感みたいな良さが脱色されすぎてるっていうか。そこは脱色しすぎずに、もうちょっとアクが残ってていいんじゃないかと思いました。

【矢野】包丁はね、なんか愛くるしかったです。欲しいと思いました。サイズ感も含めて、台所にすっと置いてあった時の姿が、主張もしてないけど、なんとなくチャーミングだと感じました。

【長田】1番欲しいし、これが1番、切ってみて欲しいって人に言いたくなりました。おすすめしたくなる。気軽に薦められる。裏の背景とか思いを伝えるのって、みんながみんな共感してくれるわけじゃないけど。これはもう、1回人参切ってって言いたい。

【大治】プロダクトの精度としては非常に突き抜けてますよね。

ではあらためて、優秀賞は七味入れ、友禅ブラウス、包丁でいきましょう!

(一堂拍手)

優秀賞「kayoi | 通」

優秀賞「kayoi | 通」

【大治】続いて、奨励賞はどうしましょうか。

【長田】傘は、やっぱりまだちょっと荒い気がします。

【大治】僕たちは、10年かかってちゃんとフィルム貼れたんだ!みたいな。イノベーションの方を見てるけど、2人はやっぱりリアルなんですよね。

【坂本】僕らは物語に引っ張られてるんですかね。でもね、できたらこのデザイナーの方に伴走してほしいんですよ。1番求めていらっしゃったのはそこだと思うので。経営のことや、売る売らないのところがうまくいってないっていうのがあって。

【大治】それこそ、奨励賞でいいんじゃないですか。売り場では売らないけど、これからどうするか相談するという形で。

【矢野】これからどうするのか、一緒に話してみたいですね。

【大治】プレゼンシートを見た時から、これ日傘だったらなってすぐ思ったので、やっぱり日傘にも挑戦してほしいですね。

審査員奨励賞「極薄和紙の雨傘」

審査員奨励賞「極薄和紙の雨傘」

【坂本】一方で、このTenFはどうでしょうか。

【長田】私が△にした理由は、量産じゃないから、販路支援に合致するかどうかなと思っていました。

でもデザインも素敵だし、甘えがないですよね。

【大治】僕も、TenFは奨励賞が絶対いいと思う。奨励賞として、ポップアップとかで呼ぶのはいいけど、継続的に販路支援をするかどうかというと。

【坂本】僕は、こういうあり方があってもいいんだっていうのを、世の中に見てもらいたい気持ちです。売るのを頑張って手伝いましょう、というレベルじゃなくてよくて、とにかくちゃんと見てもらいたい。できれば授賞式のステージに上がってほしい。そうなるんだったら、優秀賞でも奨励賞でもどっちでもいいです。本当に、みんなに見てほしい。

【矢野】ビジネスにはならないかもしれないけれど、志と仕組みを応援したいですね。

【長田】他の地域でも、プレイヤーは違うかもだけど、仕組みとして参考にできるみたいな、再現性があるものはいいなと思っています。このタッグじゃないとできないよねというのも良いんですけど、賞をあげるなら他の人が真似できるとかも良い。

【大治】これはデザイナーが作ろうと思っても作れないですよね。

【坂本】このプロダクトが目指しているものが「心の潤いと副収入」ってプレゼンで仰っていたんですけど、そこに、この先の新しい工芸像があるんじゃないかって予感がしました。こういうひそやかなものづくりが日本各地に生まれていくことが、新しい工芸が勃興する兆しというか。そういう世界線が、この営みから見えてきそうに感じました。

【大治】いわゆる本当に庶民がやってた民芸って、農閑期にある仕事だったり、副収入的な仕事だった。元々は空いてた時間で作ってたから、その値段でできてた、というものがいっぱいあった。本業にしろっていうんだったら辞める人がいっぱいいるわけですよ。

【坂本】そういうものづくりもあったはずなんですよ。いつの間にか、インダストリアルになりすぎちゃったというか。愛らしさって、ちょっとずれたとこにあるじゃないですか。この商品は、多くの人が関わるということのなかから、愛らしさを見出だせているなと思いました。

とはいえ、めちゃくちゃ仕組みがデザインされている。一反を余すところなく使うとか、いろんな人に関わってもらうために紐をつけたみたいな話とか。全部に意味と価値はあって、でも、アウトプットはちょっとこの抜けた感じを是とする、揺らぎを受け止めるというバランスがある。

【長田】限定感をもっと出すとか、伸びしろもありますよね。シリアルナンバーを入れるとか。

【坂本】それが新たな作業になりますよね。作る作業に色んな人が関われることを一つの目的にしてるというのが、すごく面白い。続いていくことや、関わる人が誇らしく思うことを最重要視してるのが、このプロジェクトの意味と価値なんですね。

審査員奨励賞「TenF」

審査員奨励賞「TenF」

あらためて、地産地匠とは何か ―デザインとクラフトのバランスの、その先へ

【大治】デザインはコントロールする技術で、クラフトは受け止める技術だと思っていて。選外の商品をいくつかみると、受け止める領域がすごく少なく感じるものがありました。コントロールするのをもう少し止めて余白をつくることで、これでいいとする、そっちの方がむしろいいと思うみたいな。止めることで、作る人がちょっと楽になったり、使う人もそれが面白さに変わる、みたいなことをしてる方が、これからのものづくりになっていくと思います。デザインが強すぎると、コントロールする方を頑張りすぎちゃう。それは多分真面目が故だと思うんですけど、上手に不真面目にやってほしいと思いました。

今までの完成度を高めるピラミッドで頂点を目指すとなると、クラフト的な技術はどんどん切り崩されてダメなものだとされていく。だけど、トップを狙わないとすると、それぞれの個性が立つし、別にそれもそれでオンリーワンでいいじゃないかと。

【矢野】かわいらしさ。その商品を家に置いておいて、あるいは身につけて、嬉しいかと言われるとどうなんだろうと。既に完成されているものに手を加えて、新しい価値を加えたとしても、例えばそれを手に届く価値にするために素材感を落としたりするのは、デザイナーとして妥協していないかと思いました。それも含めて、最終的に愛くるしくないと感じたものがありました。

例えばTenFはバランスがいいですよね。仕組みをちゃんとデザインして、緻密に設計しながら、アウトプットはまんまな佇まいで、すごくバランスが良い。

どの商品に関しても、4人で話しているのはバランスなんじゃないですか。今の時代のバランス。何かが立ちすぎないというか、こっちを立たせたらちょっと引いてみるとか。

【坂本】特に、今の時代っていうよりは、時代の兆しの方ですよね。今はちょっと見えてないところを見させてもらってる感じがすごくしていて。そういうものをみなさんと選べることに、すごく意味と価値があるなと思いますね。

【矢野】izaizaも、もともとあるガンタフトという機械をつかって、何とかこの硬いい草をタフティングするというシンプルな変換なんだけど、仕上がりがキッチュでかわいいんですよね。

【坂本】い草がある風景をどうにか残したいっていう、本当の現場のリアリティが乗っかってないと、絶対ここまで磨かれなかったんじゃないかと思いました。辞める理由しかないですよね、こんなに大変なやり方だと。

審査員奨励賞「TenF」

【大治】この、い草でどうにか作るしかない、という状況を受け止めたからこそ、ありのままの素朴さが良さとして出ている。だから無闇に完成度を上げちゃうとその良さも消える。この乱雑さもめちゃくちゃ魅力になってると思います。

【坂本】矢野さんがさっき言われていた、バランスなんでしょうね。

なので、ある種のプロデューサー的な人、あるいはそういう態度が重要ですよね。物事が途切れずに続くように、必要なところでは水をあげて、要らないところでは抜いて、みたいなことを、なんとなくやってる人の存在を、IZZAIZAやTenFのチームからは感じますね。まだ価値化できてないし、言語化できてないんですが、必要なのは間違いない。そういう人や態度がないと、こういう取り組みは途切れやすいんです。やめる理由しかないから。ずっと常にそこにガソリンを注ぎ続けてる人というか、伴走者というか。

【大治】作り手も色々いるみたいに、デザイナーもどこを軸にしてるかによって全然違うから、こういう人ってことは言い切れないですよね。プロダクトデザイナーとしてがっつりやってる人もいいと思うし。ただ地産地匠という枠組みでの評価においては、僕はデザインとクラフトの両方がちゃんと入ってるかどうかを見るべきだとは思います。

【矢野】デザインの意味は幅広くて、まさにいろんなクリエイターがいるから、その中で大事にしてほしいことは、ものに対することと人に対することで分けて考えてもいいのかもしれないですね。

審査員奨励賞「TenF」

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審査員のみなさま、一次の書類審査から最終のプレゼン審査まで、長きにわたる審査を本当にありがとうございました。

あらためて、良い地産地匠とは何か?地産地匠アワードはこれからどこに向かっていくべきか?

審査が終わってからも話は尽きず、後日あらためて座談会を実施することに。その様子は、下記の収録音声や映像からぜひご覧ください。

<Podcast / YouTubeへのリンク>

2027年度のアワードも、同様の審査プロセスのもとで審査を行う予定です。このレポートのなかで議論されていた視点を、ぜひ今年度の応募に役立てていただければと思います。

審査員のみなさま、一次の書類審査から最終のプレゼン審査まで、長きにわたる審査を本当にありがとうございました。2026年度のアワードも、同様の審査プロセスのもとで審査を行う予定です。このレポートのなかで議論されていた視点を、ぜひ今年度の応募にお役立ていただければと思います。