2025.09.04

中川政七商店主催のデザインアワード、 グランプリは端材から生まれた"ちょうどいい寿命"の箸に決定

中川政七商店主催のデザインアワード、
グランプリは端材から生まれた"ちょうどいい寿命"の箸に決定

受賞作4点を10月より販売開始。作り手への継続的な還元を目指す「地産地匠アワード」

1716年創業の奈良の老舗・株式会社中川政七商店(所在地:奈良県奈良市、代表取締役社長 千石あや)は、当社が2024年より主催するデザインアワード「地産地匠アワード2025」において、グランプリ1点、準グランプリ1点、優秀賞2点を決定いたしました。授賞発表式は2025年9月3日(水)東京にて開催。さらに10月23日(水)より「中川政七商店 渋谷店」や「ニュウマン高輪店」など直営店およびオンラインショップにて、受賞作を展示・販売する企画展を実施いたします。

地産地匠アワードは、「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げる中川政七商店による、ものづくりの新たな循環を目指す取り組みです。「地産地匠」とは、〈地元生産×地元デザイン〉のこと。産地のメーカーと地域のデザイナーが協働して生み出すプロダクトを募集し、受賞後の販路まで支援する、唯一無二のアワードです。すべての受賞作を中川政七商店が販売支援することで、メーカーとデザイナーが手を取り合うからこそ生まれる新しいスタンダードを発掘し、作り手とデザイナーの双方への継続的な還元を実現します。

昨年度の受賞作は2024年11月より、中川政七商店の直営店およびオンラインショップで販売を開始しました。グランプリに輝いた漆器「めぶく弁当」(37,400円)は、初回生産分100個がわずか3カ月で完売。また、静岡県木材を用いた準グランプリ「わっぱのケース」(14,300円〜)は、地元・静岡店で他店の約3倍の売れ行きを記録するなど、大きな反響を呼びました。

第2回となる2025年度は、プレエントリー112点、本エントリー69点の応募があり、一次審査で11点を選出。木工、漆器、染織、陶器、和紙など日本各地の多彩なものづくりの中から最終審査を経て、4点が受賞し、さらに2点が審査員奨励賞に選ばれました。

グランプリ"ちょうど良い寿命"を持つ吉野檜の「大門箸」(奈良県)

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【特徴】
箸は料理を美味しく食べるための道具であり、目立たない「名脇役」のような存在でいい。そこで、箸先を極限まで細くすることで、料理の繊細な味わいを引き立てることを考えました。試作を重ねる中で、片側をあえて太めに残す非対称型にすることで、持ちやすさと美しい所作を生み出せると気づきました。さらに、通常の利久箸に使われる杉ではなく、木目が素直で強度のある吉野檜を採用。刃物仕上げの箸先は口当たりが滑らかで、より繊細な食体験を提供します。

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【評価ポイント】
奈良県南部・吉野地方は、日本一の割り箸産地として発展してきました。もとは製材時に出る端材を有効活用するために始まった箸づくりですが、その品質の高さから全国の料亭や和食店に広まり、吉野の名を広めました。しかし2000年代以降は安価な輸入品が市場の大半を占め、技術継承が危機に直面しています。

こうした状況のなか、吉野・下市町の株式会社廣箸と、奈良在住のデザイナー・菅野大門さんがタッグを組み、2年にわたる試作を重ねて誕生したのが「大門箸」です。菅野さんは商品開発に取り掛かる前に、会社基盤の整備から買って出ました。帯巻き作業の機械化に始まり、帳簿・請求書のデジタル化、トイレや事務所の改修まで。こうした環境面の整備が功を奏し、広橋の職場にも、若い人たちが加わりました。

そして問屋を介さず、自社ブランドとしての流通を目指して生まれた「大門箸」。お箸は一生物でも使い捨てでもなく、適切なタイミングで取り替えるのが理想だと改めて教えてくれます。素材には吉野檜の中でも活用が限られていた端材を使用。数か月間しっかり使い、きちんとお別れできる--そんな「ちょうど良い寿命」をもつお箸です。それは吉野檜の生態系サイクルを支え、日本が大切にしてきた「適切な更新性」という美徳を体現する道具でもあります。ううした循環を前提とした道具こそ、本当のラグジュアリーと呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。商品の完成度に加え、デザイナーがメーカーに深く入り込み、協働の熱量を注いだ姿勢が高く評価され、満場一致でグランプリを受賞しました。

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【応募者】
メーカー:株式会社 廣箸 中磯 まき子
1986年創業の奈良県吉野郡下市町にある割箸メーカー「廣箸」。吉野杉・檜を主に、利久箸や角箸など一本一本独立した高級割箸のみを生産する。

デザイナー:A4/エーヨン 菅野 大門
1983年福島県生まれ。雑貨メーカー「A4/エーヨン」主宰。農家と古物商の祖父を持ち、米作り・物作り・古物売買に親しみながら育つ。発明と実用を両立させ、これまでにない雑貨の開発・デザイン・販売、そして"売れ続ける仕組みづくり"に取り組む。

準グランプリ 久留米絣の"偶然"をデザインに昇華した「KOHABAG」(福岡県)

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【特徴】福岡県南部・筑後地方で織られる久留米絣は先染めの織物で、染め分けた糸(絣糸)を用いて文様を表現します。その製織工程で生まれる柄のズレを錯視効果として捉え、オリジナル柄「Optical illusion Ikat」を考案し、バッグに仕立てました。約38cm幅の小幅生地を無駄なく活用し、どの柄や色でも魅力が映えるよう、シンプルで機能的なデザインに仕上げています。

【評価】デザイナーと職人のバランスが見事で、まさに「地産地匠」を体現するチームでした。久留米絣の「幅が決まっている」という特性をそのまま活かし、次代の伝統柄となり得るテキスタイルづくりに挑む気概が高く評価されました。

【応募者】メーカー:下川織物 下川強臓
     デザイナー:Hana Material Design Laboratory 株式会社 光井 花

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優秀賞 使い捨てから"愛着を育む道具"へ「三河軍手」(愛知県)

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【特徴】使い捨てではなく、使うほどに愛着が深まり、長く寄り添う軍手です。原料の「特紡糸」は三河地方発祥のリサイクル糸で、市場に出せない「B格」のワタを紡ぐことで独特の温かみある風合いを生み出します。さらにポリウレタンを加えてフィット感と保温性を高め、カラーネップ糸で選ぶ楽しさも添えました。

【評価】軍手がこんなにチャーミングに!素材の工夫はもちろん、さまざまなシーンで活躍できる魅力あるプロダクトです。使い捨てではなく「長く愛着を持って使いたい」と思わせる魅力を備え、従来の軍手のあり方を刷新するプロダクトです。

【応募者】メーカー:石川メリヤス有限会社 大宮 裕美
     デザイナー:Rosey Aphrodina 久保田 千絵

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優秀賞 誰にでもフィットする、斜行から生まれたインナー「スパイラルインナー」(大阪府)

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【特徴】包帯のように斜めに肌へ沿うフィット感を持つウェア。斜行ニットで縦横+バイアスに伸縮し、動きに自然に寄り添います。綿100%強撚糸に縮絨をかけ、無縫製で仕立てたストレスフリーな着心地。襟ぐりからも着脱できるユニバーサルデザインです。

【評価ポイント】本来は不良とされる斜行を逆手に取り、優れた伸縮性を活かして幅広い体型にフィットするインナーへ昇華させた点を評価しました。大きく伸びる襟ぐりはユニバーサルな設計で、着脱の負担を軽減し、寝たきりの方にもやさしい工夫となっています。工芸産地ではなく産業集積地から生まれた新しい挑戦として、地域の持続性にも期待が寄せられます。

【応募者】メーカー:株式会社アイソトープ 浅田 好一
     デザイナー:特定非営利活動法人ユニバーサルファッション協会 川村 岳彦、錦織 悦子、佃 由紀子
     地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター 加藤 貴司

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審査員奨励賞 「ATSUZOKO」(栃木県)

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現代の「厚底靴」から着想を得た、厚さ8cmの「厚底日光下駄」。もともとの日光下駄は、急な坂道や雪道でも歩きやすいよう「草履」と「下駄」を一体化させた独自の形が特徴です。その伝統を受け継ぎつつ、現代ファッションと融合させました。日本人としてのアイデンティティを深めたい、自分らしさを際立たせたい人に向けた、新しい選択肢です。

メーカー:日光下駄 山本 政史、中山 美穂
デザイナー:株式会社あを 青栁 徹

審査員奨励賞 シルッキアップサイクルブランケット(群馬県)

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衣服を仕立てる際に生じるシルクの裁断くず。小さな端切れにも、蚕が紡いだ糸の力は宿ります。夏は涼しく、冬は温かい。その機能を生かすため、裁断くずを集めて繊維同士を絡ませ、一枚のブランケットに仕立てました。糸から服になるまで、ほとんどゴミを出さない生産を実現し、素材を最後まで使い切る思いから生まれたものづくりです。

メーカー:Texbox 澤 利一 
デザイナー:桐生整染商事株式会社・SILKKI 川上 由綺

※「審査員奨励賞」は、受賞と販路支援には至らなかったものの、審査員が応援したいと思った商品を取り上げ、特別にアドバイスを行うものです。

全国の直営店とECで販路支援をスタート

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地産地匠アワードはすべての受賞作の販路支援をすることにより、産地のメーカーやデザイナーに継続的に利益が還元される仕組みをつくります。10月23日からは中川政七商店 直営店とオンラインショップで販売をスタート。「中川政七商店 渋谷店」をはじめ4つの旗艦店では、産地のものづくりまで紹介する記念企画展を予定しています。また2026年2月開催予定の当社主催の合同展示会「大日本市」での出展も予定し、卸先の販路拡大を目指します。中川政七商店の製造小売・流通支援のノウハウを活かし、責任をもって販路支援を行います。(審査員奨励賞は、販路支援の対象外となります)

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大治将典氏(手工業デザイナー Oji & Design代表)
長田麻衣氏(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長)
坂本大祐氏(クリエイティブディレクター オフィスキャンプ代表社員)
矢野 直子氏(積水ハウス 業務役員 兼 デザイン設計部長)

地産地匠アワードサポーター

アワードに共感し地域のものづくりの発展にご協力をいただける協賛制度「地産地匠アワードサポーター」を募集いたします。メーカーやデザイナーに限らず、新たなものづくりの循環をともに生み出すことを目的とした制度です。

協賛金: 一口 30万円
 ・WEBサイト・授賞式・受賞結果紹介パンフレットへの企業名・ロゴの掲載
 ・地産地匠アワードのロゴマーク使用許可

特別プラン協賛金: 一口 50万円~
・「地域のものづくり」や「ブランディング・商品開発」に関わるセミナーを、
   地産地匠アワードの説明とあわせて開催するプログラムです。

〈本件に関するお問い合わせ〉
kouhou@yu-nakagawa.co.jp
株式会社中川政七商店
広報 佐藤菜摘